【衝撃緩和】PCX160の突き上げ問題とは？他社のサスペンションで解決？
街中で段差を越えるたび、「ドンッ」と腰に鋭い衝撃が走る——。
PCX160に乗っている多くのライダーが感じているのが、この“突き上げ”と呼ばれる乗り心地の硬さです。見た目の上質さや燃費性能に魅力を感じて購入したものの、「長時間乗るとお尻や腰が疲れてしまう」「通勤の段差がつらい」といった声が少なくありません。
この現象は、単なる「乗り心地の好み」によるものではなく、サスペンションの構造や減衰設定、ストローク量など、メカニカルな要因が複雑に関係しています。PCX160は街乗り性能やデザイン性を重視して設計されているため、どうしても衝撃を吸収しきれない構造的な側面が存在するのです。
しかし、この突き上げを放置してしまうと、身体的な疲労だけでなく、走行安定性の低下にもつながりかねません。長距離ツーリングやタンデム走行では、その影響がより顕著に表れます。快適なライディングを維持するためには、まず原因を正確に理解し、段階的に対策を講じることが重要です。
タイ カヤバ THAI KYB PCX125 PCX160 K-Alpha アジャスタブル リアサスペンション 365mm レッド
よくメンテナンスに出しているお店で勧められているのが、上記のリアショックアブソーバーです。面白みはないのですが確かにPCX160用と書かれているものの方が、安心感があります。だって買って適合していないということがないのですから。
しかしそれだけだと面白みという意味では、全くないのではないかなと思いました。そしてそういうPCX160用の突き上げに強いリアサスペンションは今までの記事でさんざん紹介していきました。今日はよく引き合いに出されるYSSの製品も含めて、どういうものがPCX160の突き上げを軽減してくれるのか？という商品についてもご紹介させていただこうと思います。
なぜ起こる？PCX160で突き上げを体感しやすい根本原因
PCX160で突き上げを強く感じやすい最大の理由は、「リアサスペンションのストローク量と減衰特性のバランス」にあります。ストロークとは、サスペンションが伸び縮みする可動範囲のことを指し、この幅が狭いほど、路面からの入力が吸収しきれずに車体へ直接伝わる傾向があります。
- PCX160は車体デザインのシャープさと低燃費性能を優先
- サスペンションの取り付け位置や可動範囲に制限がある
- そのため乗り心地を柔らかくする“伸び代”が十分に確保しにくい。
- 純正サスペンションの減衰力設定が比較的高く、ショックの反発感が強く残りやすい。
- スプリングの戻りが強すぎるとショックが収まりにくく、弱すぎると跳ねる動きが目立つ。
- 背の高いライダーや荷物搭載時はリアショックが突っ張りやすい。
- 段差やマンホール通過時に「コツン」とした突き上げ感を感じやすい。
こうした構造的・セッティング的な要因が重なり、PCX160では他のスクーターに比べて突き上げを体感しやすくなっています。次に、この特性を左右する重要なポイントである「純正サスペンション」と「ストローク量」の関係性に焦点を当て、より具体的に解説してまいります。
純正PCX160のサスペンションの特性とストローク量の関係
PCX160に標準装備されている純正サスペンションは、燃費性能とコストバランスを重視した設計となっています。すなわち、街乗りや通勤用途を前提とした「硬めの初期セッティング」が特徴で、一般的なスクーターよりもストローク量（動作の可動範囲）が短く抑えられている点が大きな特徴です。
この「短いストローク」は、路面の細かな凹凸を滑らかにいなす柔軟性を犠牲にしており、その代わりにコーナリング時の安定性を確保しています。サスペンションストロークが短いということは、段差を越えた瞬間の衝撃を吸収できる“余裕”が少ないことを意味します。そのため、わずかな段差や舗装のつなぎ目でも、ショックが急激に底付きしやすく、結果として「突き上げ感」を強く感じるのです。
| 製品名 | 全長 (mm) | ストローク (mm) | 調整機能 | 特徴 | 価格目安 (円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 純正リアサス (ツインショック) | 365 | 約100 | プリロード (5段階) | 硬め設定で突き上げ強いが軽量134kg車重対応。耐久性標準 | – |
| YSS TG302 PCX160 | 365 | 100 | プリロード (ネジ式) | ガス封入で高速安定、突き上げ軽減。黒ボディで純正風 | 30,000-40,000 |
| YSS TZ302 RACING | 365 | 98 | プリロード | 金スプリングでクッション性高、耐荷重200kg。街乗り最適 | 45,000-60,000 |
| Öhlins S36PR1 HO112 | 368 | 97 | プリロード/リバウンド/コンプレッション | プロ級調整幅、突き上げほぼゼロ。高速・touring抜群 | 160,000-190,000 |
| ENDURANCE 黒ボディ/金スプリング | 365 | 100 | プリロード | 売れ筋で底付き解消、交換簡単。Uber Eats荷重対応 | 20,000-30,000 |
純正のリアショックアブソーバーは、二本のユニットにガス封入式ダンパーを採用しています。ガス封入式とは、内部に高圧ガスを充填することでオイルの泡立ちを防ぎ、減衰力を安定化させる構造を指します。この構造自体は信頼性が高く、コーナリング時や高速走行でのふらつきを抑えるのに有効ですが、一方で低速域・街乗りでは硬さが際立ちやすいという弱点も持ち合わせています。
走行時、シート越しに感じる“弾かれるような硬さ”は、まさにこの減衰特性の影響によるものです。特に冬場など気温が下がると、内部オイルの粘度が増し、減衰力がさらに強調されるため、突き上げが顕著になります。「夏より冬の方がゴツゴツする」と感じるのは、この物理的要因によるものなのです。
どうしても突き上げをすぐ解決したいけど多額の費用をまかなえないという方は、下記のような安いモデルでも全然ん突き上げが軽減されていると効果を実感できると思います。エンデュランスはPCXの製品に多く力を入れているので、非常に良い製品が多いと思います。
段差や路面からの入力がダイレクトに伝わる構造的な理由
PCX160の突き上げ感が顕著に表れるもう一つの理由は、車体フレームとサスペンションの**構造配置**にあります。
一般的なスクーターでは、リアショックの取り付け角度を緩やかに設定し、段差通過時の衝撃を緩やかに吸収できるよう設計されています。これに対し、PCX160ではスタイリッシュなリアデザインを維持するため、ショックが比較的立ち気味（垂直に近い角度）で取り付けられています。この構造が、「路面からの入力を直線的にライダーへ伝えやすい」という結果を生み出しています。
特に、ホンダが採用している軽量アンダーボーンフレームは、剛性バランスが高いことで知られています。アンダーボーンフレームとは、エンジン下に一本の骨格（フレームパイプ）を設け、その上にエンジンと足回りを構成する設計形式を指します。この構造は高い直進安定性と軽量性を両立する一方で、フレーム自体がしなりにくいため、サスペンションで吸収しきれなかった衝撃がダイレクトに座面まで伝わりやすいのです。
さらに、ホイールベース（前後輪の距離）が長めに設計されていることも、突き上げを感じやすくする要因のひとつです。ホイールベースが長いと、段差を越える際に前後サスペンションが同時に動作しづらく、結果として後輪側のショックが単独で強く働くタイミングが生じます。この“動きのズレ”が、いわゆる「バタつき」や「後ろから突き上げる感触」を生み出します。
シート構造にも見逃せない要素があります。PCX160のシートは質感こそ上質ですが、クッション厚が比較的薄く、内部フォーム（発泡材）の反発力が強めに設定されています。これにより、段差を越えた際の衝撃がシートの弾力によって増幅され、実際以上に強い突き上げとして感じられることがあります。
このように、フレームの剛性、ショックの取り付け角度、ホイールベースの長さ、そしてシート構造——。それぞれがわずかに硬質方向へ働くことで、総合的に“PCX160特有の突き上げ感”を形成しているのです。
長距離で蓄積する腰・お尻へのダメージとプリロード調整方法
突き上げを感じながら長距離を走行すると、最も負担を受けるのは腰とお尻の筋肉群です。特に、腰椎を支える「多裂筋（たれつきん）」や、坐骨を覆う「大殿筋（だいでんきん）」は、微妙な振動を吸収し続けることで慢性的な緊張状態に陥ります。この状態が続くと、血流が滞り、次第に「鈍い痛み」や「熱を持ったような違和感」が残るようになります。
スクーターの着座姿勢は構造的に背骨が垂直に近くなるため、腰椎への衝撃がダイレクトに伝わりやすいのが特徴です。特にPCX160のような硬めのサスペンションを持つ車両では、シートを通じて細かい振動が繰り返し加わり、いわば“常に姿勢を保つ筋トレ状態”が続くことになります。その結果、ツーリングの終盤には腰が重くなる、席を立つときに痛みが走る、という症状を訴えるライダーも少なくありません。そこで重要になってくるのが、リアショックアブソーバーについているプリロード調整です。
こんな簡単な工具でできてしまうので、工具をまず手に入れましょう。普通のフックレンチというものでも、調整が可能なようなので自分好みの硬さに調整してください。キタコのリアショックアブソーバーがよく硬くてできないという声を聴くので、このやり方なら誰でもプリロード調整が可能ではないかなと思いました。
他のメーカーのリアサスペンションはPCX160の突き上げ問題を解決できるか？
結構興味がある方が多いのが、PCX160に他社のリアサスペンションを採用できるのか？ということではないかなと思っています。実はそれができるようなのです。
つまり全長が合っていれば取り付けもできるようです。ただし他社製品を流用しているので、取り付けにはコツも若干必要な感じがしています。しかし他社のものでも評判がよく、取り付けると本当にショックを減衰してくれるものであれば取り付けたくなるのではないかなと思います。
PCX160の突き上げを解消するリアサスペンション3選！
リアサスペンションの交換については、関連記事があったので載せておきます。
PCX160のサスペンション交換完全ガイド！選び方から調整まで徹底解説 – ポレポレ日記
上記の記事を読むのが面倒な方は、動画も載せておくのでご自身でやる方は参考にしてください。今は2025年モデルがPCX160で販売しているので、2025年モデルのPCX160を基準にカスタムしている動画を載せています。
2025年モデルのPCX160はそれ以前のモデルで絶対にやらないといけなかった、カウルの全外しということをしなくても気軽にリアサスペンションの交換が可能になっています。フードデリバリーの方は時間がない方も多いので、こういう仕事をしている方で頻繁にバイクに乗る方は嬉しいのではないかなと思います。
YSS G-Racing（Gシリーズ）
PCX160専用設計のコストパフォーマンスに優れたサスペンションです。プリロード調整機能付きで、純正よりも柔軟な減衰力設定が可能。街乗りからツーリングまで幅広く対応し、突き上げを大幅に軽減できます。価格は2.5〜3.5万円程度で、多くのPCXオーナーから高評価を得ています。
| 製品名 | 特徴 | 価格目安 | 適合確認 |
|---|---|---|---|
| YSS TZ302 RACING (129-8001004) | ネジ式プリロード調整、黒ボディ金スプリングで突き上げ吸収優れ、耐久性高。交換時間0.7h | 約45,000-60,000円 | PCX160 21-（KF47）対応 |
| YSS TGシリーズ PCX160 | ガス封入で安定、高速時の跳ね低減。プリロード調整可能 | 約30,000-40,000円 | PCX160 21′ Gold仕様対応 |
| YSS G-SPORT BLACK SERIES PCX160専用 | 減衰力調整25段階、200kg耐荷重で重荷物OK。タイPCX160版とは別 | 約8,000-10,000円 | PCX160 ’21-（日本仕様） |
PCX160に相性がいいリアサスペンションは上記の表にまとめておきました。あとYSSの場合はリアだけでなくフロントフォークのアップグレードアイテムも用意されています。これも結構評判がいいようなので、興味がある方は下記の製品も突き上げを軽減する参考にしてください。
オーリンズ S36PR1C1
高級サスペンションブランドの定番モデル。プリロードと減衰力の両方を調整可能で、より細かなセッティングができます。高品質なオイルとバルブ構造により、しなやかな乗り心地と優れた路面追従性を実現。価格は6〜8万円程度と高額ですが、乗り心地の質は別格です。
| 製品名 | 特徴 | 価格目安 | 適合確認 |
|---|---|---|---|
| Öhlins S36PR1 PCX160 HO112 | ツインショック、イエロースプリングで突き上げ大幅低減、高速安定。耐久性抜群 | 約189,000円 | PCX160 21-22（KF47）対応、2025継続 |
| Öhlins リアショックアブソーバー S36PR1 | リバウンド/コンプレッション調整可能、プロ級乗り味 | 約166,000円 | PCX160 21′-明確適合 |
| Öhlins HOシリーズ PCX160専用 | ガス封入ツインタイプ、調整幅広く touring向き | 約160,000-180,000円 | PCX160 21-22（拡張適合） |
この表の中の一つを下記に紹介しておきます。かなり高価なリアショックアブソーバーなので、PCX160を買い替える予定が多々あるような人なら、あまり向かないアイテムかもしれません。しかし一回変えてしまうと乗り心地が抜群なので、思い切って買ってしまうのもアリなリアサスペンションです。
ニトロンレーシング NTR R1シリーズ
イギリス製の高性能サスペンション。ツインチューブ構造により、小さな凹凸から大きなギャップまで幅広く対応します。プリロードと減衰力調整が可能で、スポーツ走行から快適性重視まで対応。価格は4〜5万円程度で、オーリンズとYSSの中間的な位置づけです。
結構ネットで買うとお高めな商品だとは思います。しかしこういう製品は一回購入して取り付けてしまうと、その後のPCX160ライフは抜群にガンガン走り回れます。リアサスペンションの突き上げは意外と体のダメージが大きいと思っていただければと思います。費用対効果は高いので1年に一回新車を交換するほど、PCX160に乗る方にとってはかなりコスパは高いリアサスペンションだと思います。
まとめ
今日は結構多く意外性のあるリアサスペンションを紹介していきました。
- YSS G-Racing
- オーリンズ S36PR1C1
- ニトロンレーシング NTR R1シリーズ
この3つは確かに高いのですが費用対効果は異常に高いです。PCX160はPCX125よりは人気が少ないように感じます。しかし近年バイクの好みが段々軽二輪と原付二種に移っているように感じるので、この買い物もあまり高いとは限らないように思っています。
PCX160は2025年モデルからカウルを全部外さなくても、リアサスペンションの交換が可能になりました。規定トルクは測りづらいのですがしっかりネジを締めてしまえば問題はないのかなと思います。1年に一回買い替えるようなPCX160乗りの方は、逆にこの3つから買えるときに買っておいてもいいのかなと思いました。
フードデリバリーの方はこういうアイテムも経費にできるので、そういう意味でもおススメとなっています。もしそれでも予算が合わないなーとか、高くて買えないという方は別に私の購入店の店長が勧めているキタコのリアショックアブソーバーでもOKだと思います。プリロード調整の方法も記事内で紹介しています。純正のままよりはいいと思うので、この記事をきっかけにリアサスペンションを交換してPCX160の突き上げを解消していただければと思います。
